オジサンのよたよた話し


高速道路はドライブスルー

ジャカルタの街で、高速道路の計画に関わって20年以上が過ぎた。この町の高速道路の、すべての計画に混ぜてもらうことが出来たことに感謝している。ジャカルタの高速道路をすべて手がけたのはYさんという日本人だが、これだけ出来上がると、Yさんも関心をなくしたのか、最近はソフトボールに夢中になっている。まぁ、来年は皆で赤いチャンチャンコに、道路網の刺繍でもして贈呈しようかなぁ。

しかし、これだけ高速道路が出来上がった町に、再び戻って来ることがあるとは、想像していなかった。あの時の予測は、少し間違っていたかも知れないと思い出すこともある。高速道路など何もなかった昔は、車も、ほとんど走っていない静かな街だった。20年以上昔に計画した頃は、21世紀なんて、はるか遠い未来だった。既に、当時考えていた未来を越えてしまっている。

ジャカルタの空港に着くと、町までは高速道路がつながっている。そして、大体の人が驚く。自転車が走っていたり、人が歩いていたりする。渋滞すれば、物売りがやってくる。もちろん法律では禁止されている。
でも、突然、村の中に高速道路がやってきたわけだから、新参者の高速道路だって、村の広場に組み込まれても不思議はない。いやいや、アメリカよりも先進的なドライブスルーの国かも知れない。

高速道路が渋滞すると、あちこちから現れる物売り達は、水や煙草、お菓子や雑誌を売っている。便利と言えば、便利である。東京の首都高でも、是非、現れて欲しいものだ。夏の渋滞の中で、「アイスクリーム、アイスクリーム」なんて売り子がやってきたら、たちまち売り切れになるだろう。

しかし、ジャカルタの道路では、不思議なものも売っている。英語の辞書や世界地図。一体、分厚い辞書など、運転している最中に誰が買うのだろうか。もしかして、たまたま、どこかの暇な外人が、ある日「辞書はないか~?」と叫んだのかも知れない。以来、高速道路での商品アイテムに加わったのかも。しかし、辞書を1冊だけ持って、1日歩き回って、本当に商売になるのだろうかと心配になってくる。姿見やホワイトボード、犬なども道路で売っている。乞食さんも居ることは言うまでもない。

東京の首都高でも、たまに変な人に出会うことがある。東京で最も渋滞することで有名な箱崎インターの近く。夜中過ぎに、のろのろと車の列について走っていた。渋滞にうんざりしていた。その時、私の車の前を黒人の男性が、何かわめきながら通り過ぎた。日本も国際都市になったものだと思っていたのだが、しばらくして、「あれ?、ここは首都高の中だぞ」と気付いた。彼は、一体、何を叫んでいたのだろうか。

女性を見たこともある。夜中過ぎ、午前2時過ぎだったろうか。隅田川沿いに高架の上を走る首都高6号線。私は都心に向かっていた。丁度、直線に差し掛かった頃、前にも後ろにも車は居なかった。向こうから若い女性が歩いて来るのが見えた。コートを着た女性は、急ぎ足で歩いていた。夜遅くなったから、明るい高速道路を歩いて家へ帰るのかなと思いながら横を通り過ぎた。ん?、待てよ、彼女は、どこから首都高に入ったのだろうか。

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