オジサンのよたよた話し


人類誕生の記憶

私は、朝まで寝付かれない。病院へ行っても、友人の医者に説明してもなかなかわかってもらえない。

20代の後半まで、当然のことかも知れないが、どんな場所でも、どんな環境でも眠ることが出来た。だから、会社の机の下を生活場所にしていた時期もある。会社の近くには、東京でも数少ない温泉があったし、服は1着しか持っていなかったから、机の下を家にしても何も問題はなかった。
ところが、30代に入ってから眠れなくなった。暗くしようが静かにしようが、駄目なのだ。皆は、運動でもすれば眠れるとか、暗くして横になっていれば眠れるはずと言う。「徹夜すれば次の日には眠くなるでしょ」とも言われるが、そうでもない。日本だと午前6時頃まで眠れない。

これは意外につらい。まともなサラリーマンは勤まらない。だから、フリーランスのような仕事をしたり、自分で会社を作って、何とか50過ぎまで生きてきた。同僚や客先の人達の理解にも恵まれた。一緒に仕事をしたりすると、昼過ぎまで起きてこないから、他の人には迷惑がかかる。でも、その分は、夜リカバーする。だんだんと、周りの人達が、そんな生活態度を理解して許してくれるようになった。

でも、最もつらかったのは、夜中起きていて朝になって寝るのは「悪」だと教えられた潜在意識との戦いだった。自分で自分が後ろめたいのだ。だから、睡眠薬を使ってでも、なんとか夜寝たいと思った。

ちょっとした会社の社長をやっている時もつらかった。誰が考え出した習慣か知らないが、日本には朝礼なんてものがある。しばらく頑張ったが、そのうち担当部長にすべて任せることにした。アメリカのシリコンバレーでは、金曜の夕方、終業時刻前に社長も含めた簡単なパーティがあって、そこで社長が皆に少しお話しをして、その日は残業せずに帰ったりする。週末をきちんと楽しむとても良い習慣だと思う。それに比べて、毎日、朝早く叱咤激励する日本の習慣は、どう見ても、時代錯誤じゃなかろうか。

40代の半ばからは、後ろめたさが消えた。自分は、どうやっても眠れないのだからと、ようやく自分に対して開き直れるようになったのだ。

でも、私も、普通の人と同じように、朝きちんと起きて、夜中に眠れたことがある。ケニアで仕事をしていた時だ。日本とは、丁度、6時間の時差がある。インドネシアは日本と2時間の時差があって、私が何とか眠れるのが午前4時だから、時差分だけ早く眠れる。不思議なことに、世界中のどこに居ても、昼間とか夜ではなくて、日本から西側へ6時間ずれた地球時間に身体のリズムが合っているかのようだ。
私の祖先は、アフリカの西側で生まれたのだろう。あるいは、人類の祖先がアフリカで誕生した記憶を身体が覚えているのかも知れない。

てなわけで、こういうものを調べることになる。

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