オジサンのよたよた話し


カジノ必勝法

ジャカルタに住んでいた頃、カジノで勝つ方法に気づいた。当時は、ジャカルタ中心部の劇場の上がカジノになっていた。
私は、毎晩、カジノに通うことにした。毎晩、ルーレット台に向かう。ドストエフスキーの小説に「賭博者」というのがある。この小説には、バクチの極意が書いてある。勝った時には、ひたすら波に乗って掛け続けるのだ。大好きな小説なのだが、これは必勝法ではない。バクチの醍醐味は、ドストエフスキーの言う通りなのだが、絶対に勝つのは別だ。難しいことではない。勝ったところで止めればいいだけなのだ。

往復のタクシー代と入場料は経費と考えて、それ以上勝った段階で必ず帰る。これを日課にした。どんなに少なくても、丁度、波に乗っているなと感じられても、止めて帰る。他にすることも思い付かなかったから、夜の時間を過ごす方法だった。ルーレットの勝負は波がある。沈むかも知れないが、しばらくやっていれば、必ず浮く瞬間があるものだ。ひたすら沈み続けるわけではない。沈んだ時に、大きく賭けて、浮上不能になることはあるが、小さく賭けて我慢していると、必ず浮いてくる。そこで帰る。

1ヶ月続けた。あまりにも面白くないカジノ通いである。こんなつまんないものはないと、だんだん嫌になってきた。遊びなら面白いが、仕事と同じアプローチをして、カジノが面白いわけがない。しかし、相当の金額はたまった。

今は、インドネシアではギャンブル禁止である。ギャンブル禁止令が出た頃、たくさんの日本人がつかまった。自宅で麻雀をやっている所へ踏み込まれたのだ。たいていが、使用人による密告だったのだろう。そして、逮捕されて、支払う罰金が割り戻されたのだろうとか言われている(単なる噂だが・・・)。
禁止令が出るまで、私も、よく麻雀をやっていた。点棒が入った箱を落として、拾おうとしたら、丁度、サソリさんが一直線に足に向かって走ってくるところだった時もある(サソリさんは、何故か風呂場で良く見掛けたが・・・裸だと対抗手段があんまりない)。

この儲けで、サイドキャビネットを作ることにした。マホガニーの1枚板で、猫足の部分を掘り出し、引き出しも、マホガニーの厚板を切り出して曲線に仕上げるという贅沢な造りだ。マホガニーも、材木屋をまわって、厚くて節のないのを何枚も探した。どの部分も、板を継ぎ合わせるようなことをしなかった。サイドも1枚で仕上げた。材木の無駄なんて全然気にしなくて、大きな板から必要な部分だけ使った(自然破壊だなぁ~)。
自分一人では造りきれないから、大工も雇った。大工が昼間、ある程度の作業をしておいてくれる。しかし、磨きが足りない。それを毎晩、ヤスリがけして、蛍光燈が一直線に見えるまで磨き上げる。木工細工の好きなオジイサンに指導をしてもらいながら、仕上げて行った。塗りも何度もやった。

かくて、ルーレットの成果は、マホガニーのキャビネットとして残った。私としては、これだけは、つい自慢したくなるものだ(しかし、今では、猫が上に住みついている)。

ここに記載された内容は、どのような形でも、引用することも、ストリー展開を真似ることも禁止します。これを完成させるのが、老後の楽しみなのです。 Copyright (c) 1998 ojisan